コラム

後継者と衝突しないための関係構築
~“正しい距離感”が、承継の成功を左右する~
動物病院の事業承継では、譲渡側(現院長)と譲受側(後継者)との関係性がスムーズな引き継ぎの鍵になります。
どれほど実力のある後継者でも、価値観のすれ違いや関与の仕方によって対立や摩擦が生じてしまうケースは少なくありません。
特に、譲渡側が「病院への想いが強すぎる」あまり、知らず知らずのうちに後継者の自立を妨げてしまうことがあります。
この記事では、後継者と衝突を避け、良好な関係を築くためのポイントを譲渡側の立場から解説します。
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1. 「任せる」ことを前提に、関わり方を見直す
譲渡側がやってしまいがちなのが、「つい口を出してしまう」ことです。
しかし、事業承継は“経営を託す”という決断。後継者が新たな体制をつくるには、自分で考え、責任を持って進める環境が必要です。
✅ 意識すべきポイント
–「アドバイス」ではなく「相談があったときだけ答える」スタンスに
– 院内での発言権を後継者に移す
– 「見守る」姿勢に徹することで、後継者に安心感と責任感を与える
➡ 関わりすぎると「二人の院長」がいるような状態になり、スタッフも混乱します。
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2. 経営判断の違いを尊重する“心構え”を持つ
承継後、診療方針や設備投資、スタッフ管理などで**後継者と意見が食い違う場面**もあるでしょう。
そんなとき、**「自分のやり方が正しい」という視点を手放すことが大切**です。
✅ 違いを受け入れるコツ
– “正解は一つではない”という意識を持つ
– 後継者の判断が間違っていると思っても、経験の中で学ばせる機会と捉える
– 「自分の時代とは違う」という前提で、時代の変化を理解する姿勢を持つ
➡ 時には「失敗も必要」と割り切ることが、長い目で見て後継者の自立を育みます。
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3. スタッフとの“直接的な関与”を控える
後継者が院長としての信頼を築くためには、スタッフとの関係を自分で構築していく必要があります。
譲渡側がいつまでも相談や決定を引き受けていると、後継者の立場が確立できず、結果的に信頼を得にくくなってしまいます。
✅ スタッフ対応で気をつけること
– 後継者のいない場でスタッフから相談を受けないようにする
– 「この件は新しい院長に聞いてください」と伝える勇気を持つ
– スタッフとの日常的な距離感も少しずつ後退する
➡ 院内の“権限の所在”をはっきりさせることで、後継者が主体的に動きやすくなります。
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4. 感謝と信頼を言葉で伝える
承継というのは、単なる経営の移行ではなく、人と人とのバトンリレーでもあります。
「期待している」「任せている」「感謝している」という気持ちは、後継者の自信とやる気を引き出す大きな力になります。
➡ 言葉にすることで、関係性がより前向きなものになります。
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5. まとめ
後継者との衝突を避けるには、**「手放す勇気」と「見守る覚悟」が必要です。
病院に対する思いが強ければ強いほど難しいかもしれませんが、承継とは*次の世代に未来を託すこと。
✅ 自分のやり方に固執せず、後継者の判断を尊重する
✅ 関与の度合いを少しずつ減らし、主役を譲る
✅ スタッフや飼い主様にも“新体制”を意識させる
✅ 言葉で信頼と感謝を伝えることで、前向きな関係を育む
「譲ってよかった」と思える承継を実現するために、関係づくりから丁寧に向き合っていきましょう。
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