コラム

病院のブランドを維持するための引き継ぎ方法
~“信頼の積み重ね”を次の世代へつなぐには~
長年地域に根ざして診療を続けてきた動物病院にとって、“病院のブランド”は最大の資産のひとつです。
診療技術だけでなく、スタッフの対応・病院の雰囲気・飼い主様との信頼関係など、多くの要素が積み重なって生まれる「ブランド価値」は、一朝一夕で築けるものではありません。
事業承継に際しては、その価値を後継者にしっかりと引き継ぐことが、病院の存続と信頼の維持につながります。
この記事では、病院のブランドを守りながら引き継ぐために、譲渡側ができる準備と配慮について解説します。
1. 病院の“ブランド”とは何か?
「ブランド」と聞くとロゴや広告を思い浮かべがちですが、動物病院におけるブランドは**“地域の中で築いてきた信頼”そのもの**です。
✅ 病院のブランドを構成するもの
- 診療の質・方針
- 院長やスタッフの対応力
- 病院の清潔感や雰囲気
- 飼い主様への説明やコミュニケーション
- 地域社会との関わりや評判
➡ 「ここに任せたい」「この先生に診てもらいたい」と思ってもらえる理由こそがブランドです。
2. ブランド価値を「言語化」して伝える
後継者にブランドを引き継ぐためには、まず病院の“こだわり”や“らしさ”を明文化することが重要です。
「何を大切にしてきたのか」「どんな診療スタンスでやってきたのか」などを言語化しましょう。
✅ 伝えるべきポイント
- 治療方針・判断基準(例:インフォームドコンセント重視)
- 診療の流れや接遇のこだわり(例:初診時のカウンセリング)
- スタッフ教育のスタンス(例:チーム医療・指示の伝え方)
- 飼い主様との関わり方(例:高齢の飼い主様への配慮)
- 地域との関係(例:学校訪問・地域猫の支援など)
➡ 「何を大切にしているか」が共有されていれば、後継者も方針を尊重しやすくなります。
3. スタッフへの共有と巻き込み
ブランドの担い手は、院長だけでなく現場で日々接しているスタッフでもあります。
スタッフに対しても「病院として何を大切にしてきたか」を共有し、後継者とともにブランドを支える意識づけが必要です。
✅ スタッフとの協働ポイント
- 院長のこだわり・診療理念を改めて共有する
- 「自分たちがブランドを守る立場である」という意識を持ってもらう
- 承継前から後継者と一緒に働く期間を設ける
- 現場の接遇・対応をマニュアル化するなど、標準化を進める
➡ スタッフが「私たちの病院のブランドを守りたい」と思える体制づくりが重要です。
4. 飼い主様への丁寧な伝え方を考える
病院のブランドは、飼い主様の安心感によって支えられています。
事業承継に際しては、「病院が変わってしまうのでは?」という不安を抱かせないよう、丁寧に伝えることが大切です。
✅ 信頼を維持するための工夫
- 院内掲示やお知らせ文で、承継の背景と新体制の紹介を丁寧に行う
- 飼い主様との会話の中でも、「これまでと変わらず安心して通っていただけます」と伝える
- 後継者が徐々に診療に入り、顔と名前を覚えてもらう
- 院長交代イベントや手紙など、前向きな印象を与える工夫を
➡ 「病院の想いは変わらない」と感じてもらうことが、ブランドの継続につながります。
5. 元院長の関わり方に注意する
譲渡後のブランド維持において、元院長が適切な距離を取ることも重要です。
善意であっても、後継者のやり方に干渉してしまうと、「ブランドを守るつもりが、引き継ぎの妨げになる」という本末転倒の事態になりかねません。
✅ スムーズな移行のために
- 事前に「どのタイミングで院長職を離れるか」を決めておく
- 経営への関与は控え、“見守る”立場に回る
- 新体制を応援するスタンスを飼い主様やスタッフにも示す
➡ ブランドは“人”だけでなく“病院全体”で引き継がれるものです。次の世代に信頼して託しましょう。
6. まとめ
動物病院のブランドを維持するためには、単なるノウハウや診療スキル以上に、“理念”と“信頼”をどう伝えるかが鍵となります。
長年培ってきた病院の想いを丁寧に言葉にし、スタッフ・後継者・飼い主様と共有していくことが、ブランドを守る最善の方法です。
✅ 病院の診療方針や理念を言語化して伝える
✅ スタッフとともにブランドの再確認を行う
✅ 飼い主様への丁寧な説明と信頼構築を行う
✅ 元院長は適度な距離感を保ち、新体制を支える姿勢を持つ
「変わらない安心感」と「新しい信頼感」の両立を目指し、病院ブランドを未来へつなぎましょう。
LEAP Advisory Services(LEAPAS)
動物病院の事業承継におけるブランド価値の継承を、戦略と実務の両面からサポートします。
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