コラム

M&Aによる病院譲渡の流れと注意点
動物病院の事業承継方法のひとつに、M&A(第三者承継)があります。
家族や院内スタッフに後継者がいない場合でも、外部の獣医師や法人に譲渡することで、病院の存続を図ることができる手段として注目されています。
この記事では、M&Aによって動物病院を譲渡する際の基本的な流れと、実務上の注意点について解説します。
1. M&Aによる事業承継とは?
M&Aとは、病院の経営権(株式や事業)を第三者に譲渡し、運営を引き継ぐことを指します。
動物病院では、個人の獣医師や医療系企業が買い手となるケースが多く、「個人承継型」と「法人譲渡型」の2パターンが主流です。
✅ 親族に後継者がいない
✅ スタッフに院長を引き継げる人材がいない
✅ 経営の継続よりも引退を優先したい
といった場合に、病院を閉じるのではなく“売却”という選択肢を取ることができます。
2. M&Aの基本的な流れ
M&Aには、以下のようなステップがあります。
① 意思決定・準備
✔ 病院を譲渡する意思を固める
✔ 財務情報や契約関係の整理
✔ 譲渡条件(希望売却額、譲渡範囲など)の検討
➡ この段階では、専門家(M&A仲介会社や会計士)との相談を始めるのが望ましいです。
② 買い手探しとマッチング
✔ 仲介会社などを通じて買い手候補を募集
✔ 病院の概要資料(ノンネームシート)を作成し、匿名で情報提供
✔ 条件の合う候補との面談・病院見学を実施
➡ 買い手の理念や診療方針との相性も大事な判断軸になります。
③ 基本合意・デューデリジェンス(調査)
✔ 譲渡条件に合意したら基本合意書を締結
✔ 買い手によるデューデリジェンス(財務・法務・人事の調査)を受ける
✔ 問題がなければ、譲渡の最終条件を確定
➡ このタイミングで病院の詳細データを開示することになります。事前に準備を整えておくことが重要です。
④ 譲渡契約の締結
✔ 最終合意書(事業譲渡契約や株式譲渡契約)を締結
✔ 引き渡し日や譲渡額、引き継ぎ条件などを明文化
➡ 契約は弁護士や専門家のサポートを受けて慎重に行いましょう。
⑤ 引き継ぎと移行期間の対応
✔ スタッフ・飼い主様への説明や対応
✔ 院長交代の挨拶・引き継ぎ業務の調整
✔ 譲渡後、一定期間サポートに入るケースもあり
➡ 円滑な移行ができるように「引き継ぎ期間」を計画的に設けることが大切です。
3. M&Aのメリットと注意点
✅ メリット
- 後継者不在でも病院を存続できる
- 引退後の資金(退職金)を確保できる
- スタッフや飼い主様にとっても、診療の継続が可能
⚠ 注意点
- 病院の理念や診療スタイルが変わる可能性がある
- スタッフの退職や飼い主様の離脱リスクがある
- 売却額や契約条件の交渉には専門知識が必要
➡ M&Aは「売れば終わり」ではありません。承継後も病院が信頼を維持できるよう、準備と配慮が必要です。
4. 譲渡成功のために意識すべきこと
M&Aによる承継を成功させるためには、以下の点を意識しましょう。
✅ できるだけ早い段階で準備を始める(2〜3年前が理想)
✅ 病院の強みや魅力を整理し、買い手にわかりやすく伝える
✅ 買い手の選定は「相性」も重視し、焦らず慎重に
✅ スタッフや飼い主様への配慮を忘れず、丁寧に対応する
✅ 専門家のサポートを活用し、リスクを最小限にする
5. まとめ
M&Aによる動物病院の譲渡は、後継者がいない場合の有力な承継手段のひとつです。
スムーズに進めるためには、十分な準備と信頼できる専門家のサポートが欠かせません。
✅ しっかりと計画を立てて準備を進め
✅ 自院に合った買い手とマッチングし
✅ スタッフや飼い主様にも誠実に対応することで
病院の価値を次世代に引き継ぎ、安心して引退を迎えることができるでしょう。
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